院の玄関にはいつもお花を飾っているのですが、
この夏は暑すぎるのでしばらくお休みしていました。
ようやく涼しくなり始めたので、
久しぶりに花屋さんへ行って選んだのは秋の七草の一つである藤袴とリンドウ。
部屋にお花があるだけで空気が和らぎます。
すっかり朝晩は涼しくなりましたが、
夏の強い日差しと蒸し暑さに耐えながら過ごしてきた体は、たくさんの熱と疲れを溜め込んでしまいました。
9月の残暑の頃には、
いつもより呼吸が浅くしか吸えない、、
身体に熱がこもっているような感覚が抜けない、、
暑さのピークが過ぎてからの方が身体が重だるい、、
そんなお悩みを数多く聞きました。
秋の涼しい空気が混じりはじめると、
本来なら体は少しずつその熱を外へ出そうとします。
順調に循環できれば、体も心もすっきりして、次の季節へ向かう準備が整います。
しかし、今年のような長丁場の酷暑だと、
夏の疲れや熱が留まり、この自然な流れに乗れず、
だるさや重さが続いてしまうことがあります。
だからこそ、この時期は 夏の疲れを手放すことが大切です。
少しだけ脳の働きにも目を向けてみましょう。
私たちの脳には「報酬系」と呼ばれる仕組みがあります。
報酬ってご褒美??
これは、私たちが何か行動したときに、
「うれしい!」「楽しい!」「気持ちいい!」
と感じさせ、
また同じことをしたくなるように働く脳の神経回路です。
たとえば、
美味しい食事を楽しむ、
気持ちよく眠る、
お風呂でゆったり温まる、
散歩や音楽でリフレッシュする、
ショッピングに行ってお気に入りを見つける、
友達と笑いあう――
そんな日常の小さな喜びや満足感も、すべて報酬系が働いている証拠です。
代表的な神経伝達物質はドーパミンで、
やる気や達成感に関わります。
さらに、
セロトニンは心を落ち着け、
エンドルフィンは痛みや疲れを和らげてリラックスさせ、
オキシトシンは人とのつながりや安心感を支えます。
ややこしいカタカナ達ですが、
これらが、食事・睡眠・人との交流など、
心身の健康に欠かせない生活習慣を自然に続けられるようにするために身体で働いてくれています。
ところが疲労が溜まっていたり、
炎症で身体に負荷がかかっていると、
報酬系はバランスを崩しやすくなります。
その結果、
甘いもの・アルコール・スマホなど
「すぐに得られる刺激」に偏りやすくなり、
本当に大切で必要な休養や回復から遠ざかってしまうのです。
ここで大切なのが、ゆるやかに自律神経を整えていく事です。
一度ゆっくりと深呼吸してみましょう。
1日に2万回行う呼吸ですが、意識して呼吸する事はなかなかないと思います。
上手に吐けない、吸えないと感じるかもしれませんが、
気にせず10回深呼吸してみてください。
これだけでも身体の循環がかなりよくなります。
どこのツボ押すのがおすすめですか?
と質問されることもよくありますが、
ツボ押しよりもっと簡単にお手軽にできるのが、
身体をやさしくさすってあげることです。
特に手の内側、足の内側をご自身の手のひらでやさしく包み、撫でるようにゆっくりさすります。
これだけで巡りがぐんと良くなります。
こうした少しの習慣が、自律神経を整え、報酬系を健やかに働かせ、短期的な刺激ではなく「深い休養と回復」につながります。
指圧や足つぼというと、
指でツボを捉えて押す!というイメージが強いですが、
手のひら全体を大きく使ってやさしくさする
「手掌軽擦法」も大事とされており、
指圧は軽擦ではじまり、軽擦で終わる。
といわれるほどです。
私達が行う足ツボも、わかりやすく足ツボと名前は付けていますが、
手のひらをピタッと皮膚に密着させながら、呼吸に合わせて大きなストロークでアプローチする手法をたくさん使います。
ご自身でのセルフケアを大切にしつつ、
セルフケアでは行いきれないしっかりしたケアは是非お任せいただきたいと思います。
鍼灸は自律神経調整を得意としますし、
指圧マッサージは緊張や滞りを解き、スムーズな深い呼吸の手助けとなります。
心も身体も、秋の深まりを穏やかに迎えられるよう整えていきましょう。